アオモンイトトンボ交尾

アオモンイトトンボ(交尾)/東京都北区/2011.06
SONY α55+MINOLTA AFアポテレマクロ200mmF4G (F5.6 1/500 ISO400)
※上がオス、下はオスと同じ色彩のオス型メス

・「アオモンイトトンボ その1」のつづき

アオモンイトトンボのメスの色彩には、褐色のタイプ(メス型メス)と、オスと同じ色彩をしたタイプ(オス型メス)の2タイプがみられます。
なぜこのようにメスの色彩には複数のタイプがみられるのでしょうか?
※オスと同じ色彩のオス型メスは、アオモンイトトンボだけでなく他のトンボでもみられます。

アオモンイトトンボ交尾

アオモンイトトンボ(交尾)/千葉県印西市/2009.06.02
SONY α900+MINOLTA AFマクロ100mmF2.8(D)+フラッシュ (F5 1/320 ISO200)
※上がオス、下は褐色のメス型メス(少し若い個体)

アオモンイトトンボのオスは、メスの色彩を記憶してメスを探すことが知られています。
そのため、メスの中に複数の色彩型がバランスよく混在すると、オスが効率的にメスを探索できない(オスが認識するメスのタイプが個体によってばらける)と考えられ、メスがオスから執拗に交尾を試みられるリスクが低下します。
その結果、集団の増殖率や安定性が高められ、絶滅リスクが減少することがデータから示されているそうです。
(引用HP:高橋佑磨 ”研究結果の詳細 見た目の多様さが繁栄のカギ”

このことは、「集団内の多様性」が集団の繁栄に貢献していることを示す一例であり、人の世界で言う「蓼食う虫も好き好き」(たとえは虫ですが)、つまりは多様な人がいることが人という種の繁栄にもつながっているということを改めて思い出した次第です。

 

トンボの交尾について

オスは、交尾の際、メスの体内において、前に交尾したオスの精子を掻き出したり、押し込んだりする精子置換と呼ばれる行動を行います。
これは、オスが自分の遺伝子を残すための戦略で、メスの卵は、産卵の際、最後に交尾したオスの精子と受精することになります。
そのため、オスはメスが産卵にやってくる場所で縄張りを張ったり、産卵中のメスを探す探雌飛翔を行います。また、自分が交尾したメスが産卵中に他のオスに交尾されないよう、メスと連結したまま産卵したり、産卵警護飛翔を行います。
(トンボ撮影者は単独メスの産卵シーンを撮影中に突然他のオスに連れ去られるという悔しい思いをすることになります。連れ去った後、すぐ近くで交尾してくれるなら良いのですが…)

一方のメスは、産卵のたびに他のオスに交尾を迫られては堪りません。
メスの交尾拒否行動もよくみられることから、アオモンイトトンボの研究結果のように、メスが複数の色彩型を持つことで執拗な交尾のリスクを回避していることも頷けます。