2009年6月、久しぶりに千葉県印西市のオオモノサシトンボの産地に出かけ、愕然としました。
水生植物が豊かでたくさんのトンボが飛び交っていたなんて、想像すらできない変わりようです。
私が中学生の頃の1990年代前半、この池にはよく友人とバス釣りに行っていました。
この地域の池としては水質が良く、水生植物も豊富で、その証拠にライギョ(カムルチー)が多かったことをよく覚えています。
1990年代の後半(1995年か1996年頃)、久しぶりにバス釣りに訪れると、植生遷移が進行し、抽水植物が多く茂るようになりました。
夜、それまで見なかったヘイケボタルが飛んでいたので、遷移の進行で湿地化したところがあったのでしょう。
大学生になり、トンボ写真を始めた私は、この池が実はトンボの宝庫であることを知り、カメラを持って出かけたのが2001年。
遷移の進行で抽水植物が増えていましたが、水質は変わらず良好で、水面にはヒシ、沈水植物はカボンバ(外来種)と思われるものが茂っていました。
トンボはと言うと、オオモノサシトンボを始め、アオヤンマ、マイコアカネ、チョウトンボなど、この地域を代表するため池のトンボが豊富に見られました(トラフトンボは当時も少なく、池の排水路側で見た記憶があります)。
しかし、この豊かなため池の自然はいとも簡単に失われました。
もともと周囲はニュータウン計画の宅地造成地で、雑木林が一部残るものの荒れ地が広がり、未舗装路ではクルマバッタが生息するような環境でした。
そして、2000年代に急速にニュータウン建設が始まり、周囲の環境は一変。
池の環境も変わり果てました。
久しぶりに訪れた2009年6月、池の端に残った猫の額ほどの湿地で、このオオモノサシトンボに再会できたのは奇跡でした。
よく生き残っていた!と喜ぶ一方で、この池から姿を消し絶滅することに対し何もできないもどかしさ。
彼らが生きていた証として、せめて写真をしっかり残そうとシャッターを切りました。
ニュータウンに住む方は、ビルに囲まれた都会から離れ、自然豊かな環境で暮らしたいと思う方も多いと思います。
私自身も子供のときはニュータウンに住み、自然に触れ野山を駆け回った日々の経験は、今の私にとってもかけがえのないものになっています。
けれども、その一方でこうして姿を消していった生き物がいることを決して忘れないで欲しいと思うのです。
※追記:Googleのストリートビューを見ると、池の水生植物が復活しているようにも見えるので、機会があればまた見に行きたいと思います。